育児休暇,男性

皆さんの職場では、男性が育児休業を取得していますか?育児休暇は、これまで女性の権利として捉えられてきました。しかし、近年では男性の育児休暇が注目を浴びつつあります。なぜなら、男性の育児への参加が家族や社会にとって非常に重要な役割を果たすからです。

しかし、実態的には「制度があっても休めない」「休むと迷惑をかけるので休めない」といった人もいます。さらにエスカレートすると、育児休暇を申請しただけで嫌がらせを受けるようになった人も少なくありません。

この記事では男性の育児休暇を取得することで得られるメリットに加え、嫌がらせが起こる理由や対処法についても解説しています。しっかりと理解することで、男性の育児休業の取得に対する考え方が再認識できるでしょう。

男性の育児休暇がもたらすメリット

男性が育児休暇を取得することで、どういったメリットがあるのでしょうか。一般的には男性社員にだけメリットがあると思われがちです。

もちろん、間違いではありませんが、企業にとってもメリットがあることを理解しておきましょう。ここでは、男性の育児休暇がもたらすメリットを多面的に紹介します。

子供との絆を築くことができる

育児は父親と母親の共同の作業で行われるべきです。子供にとっても母親だけでなく父親との絆を築くことは、その後の人格を形成する上でも非常に重要です。男性の育児休暇が導入されることで、父親が積極的に子育てに参加し、子供との絆を深める機会が増えるのは必然です。

このことにより、子供は父親に対する信頼感や自己肯定感を高め、家族全体の結束力も強まります。また、父親も子供に対して、今まで以上に深い愛情を注ぐようになるでしょう。

ジェンダー平等を促進する

男性の育児休暇はジェンダー平等を促進する重要な手段にもなり得ます。特に日本では伝統的に女性は家庭や子育てに専念し、男性が経済的な責任を負うという役割分担があります。しかし、社会の変化に伴い、女性が働くことはごく当たり前のことです。

ところが、育児だけは女性が担うものとの古い認識は根強く、女性のキャリアアップの障害となっていることも事実です。男性が育児休暇を取得することで、家庭内の責任や時間配分がより公平になり、女性がキャリアを追求しやすくなります。ジェンダー平等を実現するためには、男性の育児休暇の普及が欠かせないといえるでしょう。

労働力の確保につながる

労働力を確保する観点からも、男性の育児休暇制度の充実は必要不可欠です。ワークライフバランスの実現のため、今後、育児休暇を取得する男性は増えることが想定されます。つまり、男性の育児休暇は決して珍しい事ではなく、当然の権利として認められていくでしょう。

また、求職者は育児休暇制度が充実していることを条件として、就職(転職)先を選考することも考えられます。したがって、男女問わず育児休暇制度が充実している企業はイメージアップにつながり、就職先として選ばれやすくなることは企業にとっても大きなメリットです。

男性が育児休暇を取得する上での課題

男性の育児休業は個人にとっても企業にとってもメリットがあります。しかし、日本人の古い考え方に基づく課題があることも事実です。ここでは、男性が育児休暇を取得する上での課題について考えてみましょう。

伝統的な男性の役割や社会的なプレッシャー

日本では「育児は女性が担うもの」「男性は外で働くもの」といった古い考え方が根強く残っています。この伝統的な男性の役割に対する考え方や社会的なプレッシャーによって、男性自身が育児休暇を取ることに抵抗感を持つことも少なくありません。

また、周囲の人々も男性が育児休暇を取得することに対して、違和感を持ったり批判的になったりすることも多くあります。このことがエスカレートすれば、育児休暇を取得する男性に対する嫌がらせに発展しかねません。

職場の労働環境の制約

男性の育児休暇については歴史が浅く、一部の企業では制度が未熟であることも否めません。具体的には職場や労働環境の制約、経済的な負担などが男性の育児休暇の普及を妨げる要因となっています。

こうした課題を解決するためには、政府や企業が積極的に制度や環境の改善を図る必要があります。例えば、男性の育児休暇を取得しやすい制度の整備や、育児に対する社会的な意識改革の推進などが挙げられます。

男性の育児休暇に対する嫌がらせとは

男性が育児休暇を取得することは、社会的にも大きな意義のあることですが、嫌がらせが横行しているのも事実です。男性の育児休暇に対する嫌がらせとは、性別に基づく差別的な行為や不当な扱いを指します。

具体的には、男性が育児休暇を取得すること否定的な態度を取る、冷たい態度や嘲笑、嫌味な発言、陰口などを繰り返す、といったものです。ここでは、具体的な事例について理解しましょう。

会社や同僚からの差別的な扱い

少子高齢化により、多くの企業で要員不足が顕著です。そのため、男性が育児休暇を取得することによって、その間の仕事の負担が他の人にかかることも少なくありません。

そのため、同僚や上司からの否定的な態度を取られたり、冷たい言葉を浴びせられたりといった嫌がらせを受けることがあります。また、急に仕事を取り上げられたりするのも不当な扱いです。こういった嫌がらせは、精神的に男性を追い詰めることにもなりかねません。

人事や昇進の妨害

男性が育児休暇を取得したことが、将来の昇進やキャリアの機会に悪影響を及ぼすこともあります。同じキャリアでありながら、昇進のスピードに差が出たり、意味もなく遠方に異動させられるなどは、明らかに不当な扱いです。

とりわけ、男性の育児休暇が定着していない職場では、こういった不当な扱いが横行しがちです。もちろん、許されるものではなく、状況によっては経営陣が訴えられ糾弾されることにもなりかねません。

社会的な偏見やステレオタイプ

男性が育児休暇を取得することについて、社会的な偏見やステレオタイプが存在する場合、周囲の人々からの嫌がらせや軽視があるかもしれません。男性の社会的な役割や性別に関する固定観念に基づいた批判や揶揄が行われることがあります。

「男性のくせに、何で育児休暇を取得するんだ!」といった暴言などです。日本には伝統的に「男性は外で働くもの」「育児は女性がすればいい」といった考え方があり、そこから抜けきれないの人が未だに多くいるのが実態だといえます。

男性の育児休暇に対する嫌がらせが起こる理由とは

男性の育児休暇における嫌がらせが起こる理由は、様々な社会的・文化的要因によるものです。ここに以下にいくつかの理由を挙げます。男性の育児休暇に対する嫌がらせをなくしていくには、その理由を理解した上で有効な対処法を検討することが不可欠です。

伝統的な性別役割の固定観念

日本には男性は仕事に専念し、女性が家庭や育児に責任を持つという伝統的な性別役割の固定観念が依然として存在します。男性が育児休暇を取得することは、この固定観念に反する行動です。

自身に利害が及ばなくとも「妻がいるのになぜ夫が育児休暇を取得するんだ」と考える人は大勢います。そのため、周囲からの反発や嫌がらせを受けることも少なくありません。

性差別意識の根強さ

男性の育児休暇が社会的には一般的だとは言い難く、男性が家庭や子育てに関わることに対する偏見やステレオタイプが存在します。「男のくせに」「男らしくない」といった考え方は性差別意識の根強さを表すものです。

しかし、育児休暇を取得する男性に対して用いられているのも事実です。これにより、男性が育児休暇を取得することに対して否定的な態度を示す人々がいることも否定できません。

企業の意識の低さ

育児休暇を取得する男性に対して、企業は少なからず経済的な負担やコストを抱えることになります。しかしながら、企業が十分に育児休暇の重要性を理解していなければ、結果的に不当な取り扱いを受けることにもなりかねません。

具体的には、男性の育児休暇に対する制度が確立されていなければ、給与やキャリアに悪影響を及ぼす可能性が高くなります。また、社員教育や意識の醸成を怠れば、周囲から理解を得られず嫌がらせを受けるリスクも高まるでしょう。。

ジェンダーステレオタイプに基づく思考

男性が育児休暇を取得することに対して嫌がらせが起こる理由の一つは、ジェンダーステレオタイプに基づく思考の影響です。日本では伝統的に育児や家事は女性の役割とされ、男性が育児に積極的に関わることは、極めて異例だと考えられています。

そのため、未だに男性が育児休暇を取得することに対しては、周囲からの驚きや非難、あるいは嫌がらせが生じることがあります。ジェンダーステレオタイプの固定観念が、男性が育児に参加することを遅らせる要因だといえるでしょう。

職場の要員不足

男性の育児休暇に対する嫌がらせは職場における労働環境、とりわけ要員不足の問題とも関連しています。多くの職場では要員不足が顕著であり、男性が育児休暇を取得することで、仕事の負担が増えることになります。

本来であれば、育児休業を取得した社員の後補充を行うべきですが、その要員すらいないのが現状です。そのため、周囲の社員から嫌がらせを受けることも少なくありません。

男性の育児休暇に対する嫌がらせを受けた時の対処法

男性の育児休業に対する嫌がらせに直面した場合、自ら状況を打開することが求められます。ここでは、育児休業に対する嫌がらせを受けた時の対処法を紹介します。一人で抱え込んで押し潰される前に、自ら現状を打開していきましょう。

法的な権利を確認する

会社の就業規則や法律などから、男性の育児休業に関する権利や保護措置がどういったものかを確認しましょう。法的な権利や会社のルールが侵害されているのであれば、まずは会社に相談することから始めましょう。

いきなり、労働組合や労働弁護士などの専門家に駆け込む人もいますがフェアではありません。まずは、会社に対処を求めるのが「道筋」です。会社に申告しても事態が好転しないのであれば、労働組合や労働弁護士などの専門家に相談すれば良いでしょう。

上司や人事部との対話

嫌がらせの状況に直面したら、まずは上司や人事部と面談し、その事実を報告しましょう。企業にはハラスメントの相談窓口を設けることが義務付けられています。

もちろん、プライバシーは厳守されます。具体的な事例や証拠を示し、嫌がらせの影響や心理的な負担を伝えることが重要です。また、感情的にならず、落ち着いて「どうしてほしいのか」を具体的に伝えることで、適切な対応やサポートを求めましょう。

周囲にサポートを求める

会社に申告しても何も対処してくれない場合、同僚や他のサポート組織、労働組合など、信頼できる人々や組織のサポートを求めましょう。特に労働組合は、組合員の労働環境を守る役割を担っています。

育児休暇の取得に起因する嫌がらせが顕在化すれば、会社に適切な対応を求めるでしょう。ただし、労働組合のサポートを受けるには組合員となることが必須です。日頃の労働組合の活動内容などを把握した上で加入を検討しましょう。

嫌がらせの内容を記録する

職場での嫌がらせが継続する場合、その内容を記録に残しましょう。日付、時間、関係者、発言や行動の具体的な内容などを記録することで、会社への申告や法的手続きに役立つ可能性があります。記録の方法については、メモでも構いませんが、より客観的な証拠とするにはICレコーダーなども有効です。

労働問題に精通した専門家に相談する

労働環境を阻害されるなど、不当な扱いを受けた場合は、労働弁護士や労働問題に精通した専門家の助言を求めるのも1つの方法です。労働弁護士などの専門家は、様々な事案に対処してきた経験があり、あなたの権利や対応策について適切な提案をしてくれるでしょう。

不当な扱いを受けることで、その後の人生に悪影響を及ぼすこともあります。少しでも疑義があるなら、専門家に相談してみましょう。

心のケアをする

職場の上司や同僚からの嫌がらせに直面すると、ストレスや不安が増大する可能性が高まります。1人で悶々と考え込んでいると、気持ちは塞ぎ込んでしまうばかりか、メンタル疾患を引き起こすことも少なくありません。

自分の感情や心理的な負担に向き合い、必要ならば専門家の支援を受けることも検討してみましょう。専門家ならではのアドバイスを受けることができます。自己ケアやメンタルヘルスの維持にも注力しましょう。

企業に求められる男性の育児休暇に関する取組み

男性の育児休暇に対する需要は、今後さらに大きくなることが想定されており、「嫌がらせ」が横行するようでは企業ブランド力の低下は必至です。

企業には「男性が育児休暇の取得しやすくなる」「嫌がらせなどの不当な扱いを発生させない」取組みが求められます。ここでは、企業に求められる取組みについて考えてみましょう。

職場環境の変革

企業には社員の意識改革に向けた取組みが求められます。男性の育児休暇取得を支援する姿勢を明確に示すとともに、仕事と家庭の両立を促進するための制度や文化を整備することが重要です。

職場で働く人々の意識改革に取り組み、ジェンダーステレオタイプに囚われない多様な育児スタイルを受け入れる職場を築く必要があります。

育児休暇制度の見直し

企業は育児休暇制度を見直し、男性でも取得しやすい制度とすることが大切です。育児休暇を取得する男性が増え始めたのは、つい数年前からです。

そのため、現行の育児休暇制度が、現在の職場環境にマッチしていない可能性もあります。男性・女性問わず職場で働く社員が、気兼ねなく育児休暇が取得できる制度となるよう、職場の意見を取り入れながら制度をアップデートすることが重要です。

教育と情報の提供

社員の意識改革を効率的に進めるのは、教育と情報を提供することも重要です。研修などを通じて、男性が育児休暇を取得することの重要性やメリットなどを広く伝えることで、男性の育児参加への理解と支援が進むでしょう。また、社員教育を効率的に行うには、部内講師だけでは限界があることから、部外講師に依頼するのも1つの方法です。

男性の育児休暇の重要性を理解して嫌がらせを根絶しよう

男性の育児休暇は家族や社会にとって非常に意義深いものです。父親の参加によって築かれる強い家族の絆や、ジェンダー平等の実現は、社会全体の幸福度を高めることに繋がります。つまり、男性が育児休暇を取得することは、家族や社会の未来において重要な一歩となるといえるでしょう。

しかしながら、日本の企業では定着しているとは言えず、取得する人に対する嫌がらせや不当な扱いが横行しているのも事実です。 この状況を打開するには、企業が男性の育児休暇を正しく理解し、適切な取組みを行うことが不可欠です。

適切な取組みを行わない企業はブランド力を低下させてしまうでしょう。つまり、企業がブランド力を維持し社会的な信用を得るには、男性の育児休暇を支援し、より包括的で公正な社会の実現を目指していくことが大切だといえるでしょう。