長時間労働

働き方改革の導入により、長時間労働は是正されたと思われがちですが、現場ではまだまだ大きな課題が残されています。経営側は法律に違反しないよう「長時間労働を是正せよ!」と号令をかけ、表向きには是正されています。しかし、様々な問題が起きていることを見逃してはなりません。この記事では、長時間労働の是正に起因する課題について解説します。

長時間労働が引き起こす無限ループとは

長時間労働に起因するメンタル疾患が大きな課題となっています。メンタル疾患を引き起こす要因の1つとしてあげられるのが、睡眠不足です。労働時間が長くなれば、必然的に睡眠時間は削られていくことから、睡眠不足となるのは当然の結果だといえます。

また、睡眠不足だと判断力が鈍ってしまうことから、仕事上のミスも増えます。ミスが増えれば、上司から叱責されることも多くなり、必然的にストレスを抱え込むことになります。この状況が続けば、さらに眠れなくなり、負のスパイラルは無限ループを繰り返しかねません。

見逃せない日本人気質

日本人は非常に勤勉であり、仕事に対して過剰な責任感を感じる人も少なくありません。勤務時間内に与えられた仕事ができなければ、自分の責任だと思い込み、サービス残業も厭いません。

また、事業場の責任者も「仕事ができないのは個人の責任である」と考える傾向が強くあります。この考え方がエスカレートすれば、平気で部下社員を「給料泥棒!」「仕事ができるまで、何時間でもやれ!」などと叱責する者もいます。

このように、日本帝国軍のようなスパルタ体質が、未だに多くの企業に残っているのが実態です。もちろん、働き方改革が導入され、また、若い人々の気質の変化により、10年前と比較すれば職場の風景は大きく変わりました。しかし、日本人の気質が簡単に変化しないのも事実です。

働き方改革の目的とは

日本国内における労働力不足は、年々、その深刻度が増しています。40年後には現在の4割減といったデータもあり、日本の国力の低下も避けられない状況です。そもそも働き方改革が導入する目的の1つには、低下する国力に歯止めをかけることがあります。

労働者が健康で長く働ける環境を整備することで、減少し続ける労働人口の「延命」を図ろうとしているといえます。また、短時間勤務や再雇用など働き方の多様化を認めることで「埋もれた労働力」を発掘・活用することで労働力の確保を目指しています。

こういった状況下において、長時間労働の是正は企業のみならず、日本国家においても大きな課題です。そのため、多くの企業では長時間労働の禁止を掲げ、「残業は厳禁」だとする風潮を作り出しています。

長時間労働の是正に起因する弊害とは

いくら企業が長時間労働の是正を打ち出しても、現場では簡単にいかないのが現状です。なぜなら…、仕事量は大きく変わっていないからです。もちろん、仕事のやり方を見直して成功している企業も多くありますが、単に「残業を減らすこと」に傾注している企業も少なくありません。

事業場の責任者(中間管理職)は、残業が多いと叱られ、業績が上がらないと叱られるため、部下社員にきつく当たらざるを得なくなっています。事業場の責任者も大きなストレスを抱えており、ハラスメントまがいの行為に至るのも必然だといえるでしょう。(決して肯定も同意もしませんが…)

真に長時間労働を是正するには

真に長時間労働を是正するには、経営側が仕事のやり方について、真剣に考え改善することが不可欠です。漫然と、これまでのやり方に捉われるのではなく、徹底した効率化を図るべきであり、大きな投資も必要です。

また、日本人の気質を理解することも大切です。先に紹介したとおり、日本人は勤勉で仕事が成し遂げられなければ、自分の責任だと思い込みます。さらには、そういった勤勉さにつけこむ者が居ることも理解しておかなければなりません。

経営側はこれらのことを理解した上で、単に残業を減らすことを考えるのではなく、仕事の仕組みを根本から変革する覚悟を持つことが極めて重要です。仕事の仕組みを作り上げるには大きなコストもかかりますが、トラブルが発生すれば大きく報道されます。その結果、企業のイメージダウンだけでなく、新規採用をはじめとする人材確保にも影響を及ぼすことを忘れてはなりません。

この記事のまとめ

  • 長時間労働が横行することでメンタル疾患が引き起こされる。
  • メンタル疾患の大きな要因は睡眠不足であり負の無限ループを引き起こす
  • 日本人には仕事ができないのは自分のせいだと思い込む気質がある
  • 日本の労働人口の減少は極めて深刻である
  • 働き方改革の目的は労働力の確保であり国力の回復である
  • 単に長時間労働を是正するだけでは問題は解決しない
  • 経営側は「仕事の仕組み」を根本から変革する覚悟が必要