長時間労働

長時間労働に悩まされていませんか?長時間労働は様々な弊害を引き起こします。働き方改革の導入により、長時間労働は是正されたと思われがちですが、現場ではまだまだ大きな課題が残されているのが現状です。

経営側は法律に違反しないよう「長時間労働を是正せよ!」と号令をかけ、表向きには是正されています。しかし、号令をかけるだけでは長時間労働は是正されません。

職場には長時間労働に関する様々な問題が起きていることを見逃してはなりません。この記事では、長時間労働の弊害に加え、是正できない理由いついて紹介しています。また、長時間労働を是正する方法についても解説していますので、参考にしてください。

長時間労働が引き起こす無限ループとは

長時間労働に起因するメンタル疾患が大きな課題となっています。メンタル疾患を引き起こす要因の1つとしてあげられるのが、睡眠不足です。労働時間が長くなれば、必然的に睡眠時間は削られていくことから、睡眠不足となるのは当然の結果だといえます。

また、睡眠不足だと判断力が鈍ってしまうことから、仕事上のミスも増えます。ミスが増えれば、上司から叱責されることも多くなり、必然的にストレスを抱え込むことになります。この状況が続けば、さらに眠れなくなり、負のスパイラルは無限ループを繰り返しかねません。

長時間労働がもたらす弊害とは

長時間労働を続けていると、メンタル疾患だけでなく様々な弊害を引き起こします。後々になって後悔しないよう、どういった弊害があるのかを知っておくことが大切です。ここでは、長時間労働が引き起こす弊害について、具体的に解説します。

健康被害を引き起こす

長時間労働を続けていると、身体的および精神的な健康被害を引き起こす可能性があります。慢性的な疲労やストレス、不規則な生活リズムは、心血管疾患、うつ病、不眠症、消化器疾患などの健康リスクを増加させることも少なくありません。

とりわけメンタル疾患は完治までに時間を要することも多く、最悪の場合には退職に追い込まれることもあります。近年では、長時間労働に起因する疾患が、労働災害に認定されることもあり、企業にとっても大きなダメージです。

労働生産性の低下

長時間労働は、労働者の集中力を低下させることから、ミスを誘発させたり生産性が低下させたりする可能性が高くなります。その結果、業務品質や効率が悪化することにつながり、残業代ばかり嵩むことにもなりかねません。

労働生産性の低下だけではなく、企業経営にも悪影響を及ぼします。残業代は割増賃金で支払われなければなりませんから、企業経営を圧迫することにもつながります。

ワーク・ライフ・バランスの悪化

長時間労働を行うことで、労働者はプライベートの時間が少なくなり、家族や友人などとの関わりが制約されます。仕事との調和を欠き、ストレスや疲労感を引き起こすことで、家庭生活や個人の幸福度が低下する可能性が高くなります。

ワークライフバランスの悪化により、パートナーとの関係が悪化したり、離婚するカップルも少なくありません。その結果、労働者がメンタルの不調を訴えることも少なくありません。

雇用の不均衡・求職者が集まらない

長時間労働の文化が浸透している場合、労働者の間での雇用の不均衡が生じることがあります。特に女性や子育て中の親、高齢労働者など、柔軟な働き方を求める人々にとって、長時間労働は難しい状況を作り出す場合も少なくありません。

さらに、新規採用を募集しても応募者が集まらないといった弊害もあります。最近の若年層は就職する企業を選ぶ際、賃金よりもワークライフバランスの実現性を重要視する傾向が強くあります。そのため、長時間労働が常態化している企業は敬遠されがちです。

社会的問題となる

長時間労働は社会全体にも悪影響を及ぼすことがあります。例えば、労働者の健康問題や労働条件の悪化が増加すると、医療費や社会保障負担が増える可能性があります。また、労働者の生産性低下や雇用の不均衡が経済に悪影響を与えることも考えられます。

見逃せない日本人気質

日本人は非常に勤勉であり、仕事に対して過剰な責任感を感じる人も少なくありません。勤務時間内に与えられた仕事ができなければ、自分の責任だと思い込み、サービス残業も厭いません。

また、事業場の責任者も「仕事ができないのは個人の責任である」と考える傾向が強くあります。この考え方がエスカレートすれば、平気で部下社員を「給料泥棒!」「仕事ができるまで、何時間でもやれ!」などと叱責する者もいます。

ここでは、日本のビジネスマンに長時間労働が多い理由を紹介します。近年、長時間労働は減少傾向にありますが、日本人の気質や企業文化に起因するものが残っていることも見逃せません。

企業文化と働き方の慣習

日本の一部の企業では、長時間労働が勤務慣習とされており、従業員が多くの時間をオフィスで過ごすことが期待されています。昭和の時代であれば、当たり前の企業文化ですが、未だに残っているのです。

このような企業文化が残っている職場では、仕事の成果よりも職場に残っていることが評価されます。そのため、残業や仕事の遅くまでの継続が一般的となっています。

仕事への責任感と忠誠心

日本の社会において、仕事への責任感や忠誠心は非常に重要視されます。多くのビジネスマンは、組織や会社への忠誠心から、自らの時間や労働条件を犠牲にしてでも仕事を完遂しようとする傾向があります。

また、前項で紹介した企業文化にも関連しますが、そういった社員を評価する傾向が残っていることも問題です。仕事への責任感・忠誠心と長時間労働は別物であることを認識することが大切です。

競争とキャリアの圧力

日本のビジネス環境は非常に競争が激しく、キャリアの発展において長時間労働が求められる場合があります。特に中間管理職や上級管理職になるためには、長時間労働をこなすことが求められることがあります。

時間外労働を行うには三六協定の締結が不可欠です。しかし、条件によっては管理者が三六協定の適用外となるため、長時間労働を助長する要因ともなっています。

労働法や労働文化の制約

日本の労働法や労働文化は、労働者保護や労働時間の制限に関しては一定のルールが存在しますが、実際の労働環境ではこれらのルールが適用されない場合もあります。

また、労働者が長時間労働を行わざるを得ない状況となることを「自分の能力の問題」として抱え込むことも少なくありません。つまり、企業の問題ではなく、個人的な問題としてとらえられてしまい、改善が進まないこともあります。

働き方改革の目的とは

日本国内における労働力不足は、年々、その深刻度が増しています。40年後には現在の4割減といったデータもあり、日本の国力の低下も避けられない状況です。そこで、働き方改革が導入する目的の1つには、低下する国力に歯止めをかけることがあります。

労働者が健康で長く働ける環境を整備することで、減少し続ける労働人口の「延命」を図ろうとしているといえます。また、短時間勤務や再雇用など働き方の多様化を認めることで「埋もれた労働力」を発掘・活用することで労働力の確保を目指しています。

こういった状況下において、長時間労働の是正は企業のみならず、日本国家においても大きな課題です。そのため、多くの企業では長時間労働の禁止を掲げ、「残業は厳禁」だとする風潮を作り出しています。

長時間労働の是正が進まない要因とは

いくら企業が長時間労働の是正を打ち出しても、現場では簡単に是正できないのが現状です。なぜなら…、仕事量は大きく変わっていないからです。もちろん、仕事のやり方を見直して成功している企業も多くありますが、単に「残業を減らすこと」に傾注している企業も少なくありません。

事業場の責任者(中間管理職)は、残業が多いと叱られ、業績が上がらないと叱られるため、部下社員にきつく当たらざるを得なくなっています。事業場の責任者も大きなストレスを抱えており、ハラスメントまがいの行為に至るのも必然だといえるでしょう。(決して肯定も同意もしませんが…)

古くからの企業文化・慣習が払拭できない

先に紹介したとおり、長時間労働は企業文化として、古くから働き方の慣習として定着している場合があります。過労を美徳と考える風潮や長時間働くことを求められる競争的な環境などが未だに存在する企業も少なくありません。

もちろん、悪しき企業文化であることを理解している社員もいます。しかし、社内での立場上、意見できないことも多く是正に至らないことがあります。

労働者の意識・選択

長時間労働を継続して行う理由として、労働者自身がそのような働き方を選択している場合があります。経済的な動機やキャリアの発展、自己実現のために長時間働くことを選択する人も少なくありません。

とりわけ、残業代が生活給となっている場合には、自己の意志で長時間労働を選ぶ傾向があるため是正が難しくなります。

労働環境の問題

長時間労働の是正が進まない理由として、労働環境の問題が挙げられます。本来であれば、適切な労働時間管理や労働負荷の適正な分散、労働条件の改善などが必要です。

しかし、これらの改善が行われていない場合、長時間労働が是正されることはありません。特に経営側が長時間労働を課題だと捉えていない場合、是正に向けた取組みは行われないばかりか、助長されることもあります。

長時間労働を是正する方法とは

長時間労働の是正は企業にとって喫緊の課題であり、正しく是正しなければなりません。しかし、具体策について見い出せない場合があるのも事実です。

ここでは長時間労働を是正する方法を紹介します。職場の状況に応じて、いくつかの方法を組み合わせて実践することが有効です。

労働時間の規制

時間外労働を発令するには、三六協定を締結することが不可欠です。しかし、三六協定を時間外労働の「枠」と考えるのはナンセンスです。社内で独自の規制を設けて、1週間あたりの労働時間を制限するのも長時間労働を是正する1つの方法です。

また、労働者が経営に是正を求めるなら、三六交渉で大幅に締結時間を短縮させるのも良い方法です。経営側に繁忙要素を提出させ、真に必要な時間に絞り込んで締結することで、労働基準法などの労働時間規制に従って、労働者の労働時間を適正な範囲で制限することが可能です。

フレックスタイム制度の導入

フレックスタイム制度を導入することで、労働者が柔軟に勤務時間を調整できるようにします。これにより、労働者が自分の生活スタイルに合わせて効率的に働けるようになり、長時間労働を回避できる可能性があります。

最近、多くの企業で導入されているリモートワークも同様です。ただし、適切に始終業時間を確認しないと、正しく労働時間を把握できません。その結果、サービス残業となる場合もありますので注意が必要です。

労働環境の改善・生産性の向上

労働環境を改善し、生産性を向上させることで、長時間労働を削減することができます。職場の問題を洗い出し、効率的な業務プロセス入や作業性を向上させる設備・ツールを導入することで、生産性の向上が期待できます。

生産性が向上すれば労働力の節約にもつながり、必然的に長時間労働は是正されます。経営側からすればコストの持ち出しとはなりますが、「先行投資」として割り切る覚悟が必要です。

勤務時間管理の徹底

勤務時間管理を徹底し、過剰な時間外労働を抑制することも効果があります。経営側が積極的に労働時間の適正化やタスクの見直し、効率的な業務管理を導入することで、職場風土は明らかに変化します。

また、残業を命じる際にも「本当に今日やらなければならない仕事なのか」を明確にすることも大切です。勤務時間管理を徹底することで、社員にも時間内に仕事を仕上げようとする意識が醸成されることも大きなメリットです。

労働意識の改善と働き方改革の推進

悪しき企業文化を払拭し、長時間労働を是正するためには、労働者や雇用者の意識改革が不可欠です。働き方改革に関する啓発活動や研修の実施、労働条件の改善などを通じて、長時間労働を是正する意識を経営側が広めることが大切になります。

また、長時間労働を行う社員を評価する風土を払拭することも重要です。効率的に仕事を進める社員こそ評価されるべきであり、経営側の管理者に対する意識改革が必要だといえるでしょう。

真に長時間労働を是正するには

真に長時間労働を是正するには、経営側が仕事のやり方について、真剣に改善することが不可欠です。漫然と、これまでのやり方に捉われるのではなく、徹底した効率化を図るべきであり、大きな投資も必要です。

また、日本人の気質を理解することも大切です。先に紹介したとおり、日本人は勤勉で仕事が成し遂げられなければ、自分の責任だと思い込みます。さらには、そういった勤勉さにつけこむ者が居ることも理解しておかなければなりません。

経営側はこれらのことを理解した上で、単に残業を減らすことを考えるのではなく、仕事の仕組みを根本から変革する覚悟を持つことが極めて重要です。仕事の仕組みを作り上げるには大きなコストもかかりますが、トラブルが発生すれば大きく報道されます。

その結果、企業のイメージダウンだけでなく、新規採用をはじめとする人材確保にも影響を及ぼすことを忘れてはなりません。企業が長時間労働の是正は喫緊の課題であることを認識し、積極的に対処することが重要であるとともに、労働者も正しく意見することが大切だといえるでしょう。

この記事のまとめ

  • 長時間労働が横行することでメンタル疾患が引き起こされる。
  • メンタル疾患の大きな要因は睡眠不足であり負の無限ループを引き起こす
  • 日本人には仕事ができないのは自分のせいだと思い込む気質がある
  • 日本の労働人口の減少は極めて深刻である
  • 働き方改革の目的は労働力の確保であり国力の回復である
  • 単に長時間労働を是正するだけでは問題は解決しない
  • 経営側は「仕事の仕組み」を根本から変革する覚悟が必要