
パワハラ被害については様々な事案が報道され、企業にとって大きなマイナスイメージになることは誰もが理解している(ハズ)です。しかし、多くの職場でパワハラが残っているのが実情であり、その対策が大きな課題であるといえるでしょう。この記事では、改めてパワハラがなぜ起こるのかを考えてみましょう。
パワハラ防止法とは

労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が施行され、中小企業を含む全ての企業がパワハラに対して、有効な措置を行うことが義務付けられました。
- 事業主の方針等の明確化および周知・啓発
- 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワハラ に関する事後の 迅速かつ適切な対応
- 併せて講ずべき措置
労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!
企業はこれらの措置を講じないと、法律違反となり罰則が課せられます。従って企業としてもパワハラを起こす社員は悩みのタネであり、排除したい人材であることは間違いありません…。
パワハラが顕在化しない理由とは

職場には明らかにパワハラが横行しているにも関わらず、顕在化しない職場も少なくありません。結局、パワハラは黙認され、パワハラをしているにも関わらず重要なポジションに登用されていく、いわゆる「パワハラモンスター」も少なくありません。
パワハラが顕在化しない理由の一つは「仕返しが怖い」「正しいことを指摘されている」として、被害者が口を噤んでしまうことです。
パワハラモンスターの多くは、ある程度「仕事ができる」人材であり、役職者であることが大半です。社内にパワハラ通報窓口が設置されていても、バレたら仕返しされてしまうと考えるのは当然かもしれません。
また、パワハラモンスターの被害者は、真面目すぎる性格の人が多く、叱られるのは「自分に原因がある」と考えがちです。そのため、パワハラを申告するどころか、「叱られて当然」だと思い込んでしまう人も多くいます。
企業はパワハラが顕在化しないことにホッとしている?

企業がパワハラの対応に消極的な場合も少なくありません。先に紹介したとおり、企業にはパワハラを防止する義務があります。しかし、実際に対応するとなると多大な労力がかかり、デリケートな対応が求められます。
また、問題が大きくなるとマスコミにも取り上げられてしまうことから、できれば「顕在化しないでほしい」と願っている企業も少なくありません。ましてや、優秀な人材がパワハラモンスターだと、その対応は非常に難しくなります。
さすがに、パワハラを隠蔽するブラック企業は激減しているものの、「できれば顕在化しないでほしい」と願っている企業は少なからずあるでしょう。しかし、こうした企業体質がパワハラを横行させているのも事実です。
パワハラを引き起こす社員もメンタルに支障を来している

パワハラといえば、被害者がメンタル疾患に追い込まれることが一般的です。しかし、パワハラの加害者においても、多大なストレスを抱えており、メンタルが崩壊している場合も少なくありません。(決して肯定しませんが…)
例えば会社から相当な営業実績を求められている場合、そのプレッシャーに耐え切れず、実績が上がらない社員を罵倒するのは典型的なパワハラの事例です。その他にも、家庭に問題を抱えている役職者が、特定の社員をパワハラの標的にすることも少なくありません。
私は何人ものパワハラモンスターにヒアリングを行いましたが、突然、泣きだす者も少なくありませんでした。抵抗しない者を見つけては、怒鳴り散らすことにより、自分の力を見せつけることで、他の社員を威嚇していたのでしょう。
もちろん、こういった輩を許すことは企業にとって負の遺産を抱えることに他なりません。メンタルに支障を来しているのであれば、会社の責任としてカウンセリングなり治療を受けさせるべきなのです。
ハラスメントを撲滅するには企業の覚悟が必要

ハラスメントを撲滅するには、企業の覚悟が必要です。ハラスメントを顕在化する勇気が必要です。ハラスメントを顕在化すれば、一時的には世間から大きな批判を受けるでしょう。企業にとって有益な人材を糾弾せざるを得ないこともあるでしょう。
しかし、パワハラが存在する企業に将来はありません。パワハラの加害者の中には助けを求めている人も少なからず居るでしょう。もちろん、パワハラの被害者は一刻も早い「パワハラからの解放」を望んでいます。
もちろん、パワハラの被害者が勇気を出して、顕在化することは必要不可欠です。しかし、立場の弱い労働者に勇気を求めるのは酷です。パワハラの加害者・パワハラの被害者を救えるのは、企業以外にはないことをトップは理解し、覚悟を決めることが重要ではないでしょうか。
この記事のまとめ

- パワハラ防止法には、企業にパワハラを撲滅する責務があることが明文化されている。
- パワハラが顕在化しないのは、被害者が「仕返しを恐れている」「自分が悪い」と思い込んでいるからである。
- パワハラが顕在しないことにホッとしている企業もある。
- パワハラの加害者もメンタルに支障を来している場合も多い。
- パワハラを撲滅するには、企業の覚悟が必要不可欠である。